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第123問 翻訳の手法の問題

カナダのヤングアダルト作家マーシャ・スクリピック(ホームページのアドレス 引用元ページへ)の小説 The Hunger の一節です。ここは主人公ポーラの父が初めて登場する場面ですが、第3段落第2文の主語 Erik Romaniuk を訳すとしたら、下の4つのうちどれが最適でしょう。ひとつ選んでください。

"Paula, the day's wasting away. Get up!"

Her father's voice jolted her out of her reveries. Paula's first inclination was to snuggle even deeper into the warmth of her comforter, and pretend that she was asleep, but she knew it would do no good. Her father had the day off, and her father wanted to take a nice long run, with his daughter.

She pulled the covers away from her face and squinted up at the figure in the hallway. Erik Romaniuk was already dressed in a T-shirt and well-used pair of jogging shorts that were far too short for a man of his age.

a. エリック・ロマニックは
b. 父さん──エリック・ロマニック──は
c. 父、エリック・ロマニックは
d. 父さんは


解答・解説

      

正解は b. の「父さん──エリック・ロマニック──は」です。

この例は英語と日本語の文章の書き方の違いのひとつがはっきり分かる一節です。第2段落冒頭で Her father's voice と書いて、Erik Romaniukではなくfatherを使っているのです。主人公の父親を初めて登場させる場合、日本語ならこんな風には書きません。第2段落冒頭で「父のエリック・ロマニックは」といった具合に最初に固有名詞で紹介するものです。ところがここでは英文のやり方で、ようやく第3段落の第2文で名前を出しています。これを日本人が読むと、突然途中で固有名詞が出てきたことにかすかな違和感を感じることがあるのです。

この違いを皆さんにはっきり感じていただくために、課題文全体を英語と同じ方法で日本語にしてみましょう。いつものように簡単に辞書が引けるように、原文も再掲します(リンクをクリックすると意味が表示されます)。

"Paula, the day's wasting away. Get up!"

Her father's voice jolted her out of her reveries. Paula's first inclination was to snuggle even deeper into the warmth of her comforter, and pretend that she was asleep, but she knew it would do no good. Her father had the day off, and her father wanted to take a nice long run, with his daughter.

She pulled the covers away from her face and squinted up at the figure in the hallway. Erik Romaniuk was already dressed in a T-shirt and well-used pair of jogging shorts that were far too short for a man of his age.

 

「ポーラ。寝ぼすけめ。起きろ!」

父さんの声で、うとうとしていたポーラは目がさめた。とっさに顔を暖かい布団にうずめて眠っているふりをしようとしたが、無駄な抵抗だということは分かっていた。父さんは今日は休みで、娘といっしょに気持ちよくたっぷり走りたいのだ。

ポーラは顔から布団をはがし、目を細めて廊下に立っている人を見上げた。エリック・ロマニックはもうTシャツを着、いい年のくせにひどく短い履き古しのジョギングパンツを履いている。

これでは「廊下に立っている人」と「エリック・ロマニック」の関係が微妙にはっきりしません。なんで突然エリック・ロマニックなんて人が出てきたんだろう、と首をかしげる人も出てきます。そこで「廊下に立っている人を見上げた。エリック・ロマニックは」を「廊下に立っている人を見上げた。父さん──エリック・ロマニック──は」などとすれば、これまで話してきたポーラの「父さん」の名前が「エリック・ロマニック」であることを日本語の文章としては自然な形で表せますから、読者もよけいなことにわずらわされずに物語の筋を追っていくことができます。

これは英文の書き方の特徴のひとつです。逆に英文を書くときにこの方法を使えば、英文らしい英文を書くことができるかもしれませんね。

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